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シン・ウルトラマン感想 これぞ空想特撮! ※ネタバレあり

 シン・ウルトラマンを観てきたので、ネタバレ込みで感想を書いていきたいと思います。

 シン・ゴジラに続き、庵野秀明さんと樋口真嗣さんのタッグで製作されたシンの名を継ぐウルトラマン

 ウルトラマンフリークとして知られる庵野さんが手掛けるウルトラマンがどうなってしまうのか、良くも悪くも話題になった本作ですが……個人的には非常に満足度の高い映画でした!

 

しっかりヒーローだったウルトラマン

 禍威獣と呼ばれる巨大生物の脅威に晒され、禍特対と呼ばれる禍威獣対策のスペシャリスト達を筆頭にして戦いに明け暮れる日本。

 しかし電気を食らう強力な禍威獣ネロンガの前に禍特対は有効な手立てを打てず、このままでは日本壊滅の危機……という窮地に、突如として宇宙から銀色の巨人が出現し、ネロンガを倒してしまいます。

 ウルトラマンと呼称されたその巨人は禍特対の隊員である神永信二と一体化し、ウルトラマンの来訪を切っ掛けに姿を現す禍威獣や宇宙人の脅威から地球と人類を守るべく戦いを繰り広げるのです……。

 

 シン・ゴジラにおけるゴジラが人類の手に負えない脅威として絶望を与える存在だったことや、最初に公開された棒立ちのウルトラマンの不気味さから、今回のウルトラマンゴジラと同じように、人類にとって脅威のような存在となるのでは? という不安がありました。

 ですが結論から言えばウルトラマン最初から最後まで人類の味方でした。

 ネロンガが出現した際、逃げ遅れた子供を助けたことでネロンガの攻撃に巻き込まれ、落命してしまった神永の勇気に感銘を覚えたウルトラマンは神永と一体化し、神永として行動する内に人類の可能性を信じるようになり、人類を守る為に戦うことになるんですね。

 初代ウルトラマンは近年の作品では「怪獣退治のスペシャリスト」として称えられているのですが、今作のウルトラマンも苦戦することはあっても驚異的なフィジカルと多彩な技で対峙する禍威獣や宇宙人を的確に葬り去っており、その名に恥じぬ実力が伺えます(初代ウルトラマンと今作のウルトラマンは別人なのですが)。

 神永と一体化したウルトラマンは宇宙人ということもあり、感情が希薄ではあるもののどんな状況でも命を賭して戦う覚悟を持ち合わせており、斎藤工さんの落ち着いた演技と相まって、ある種の凄みさえ感じてしまいました。

 

存在感が凄いメフィラス星人

 今作ではウルトラマンと人類を敵対するように仕向け、最終的には人類で同士討ちをして滅ぶよう仕向けようとしたザラブ星人、人類を有用な兵器として目を付け、自らの管理下に置こうと目論んだメフィラス星人といった、初代ウルトラマンで人気を博した悪役宇宙人がリブートされて登場します。

 ツダケンこと津田健次郎さんが演じるザラブ星人の演技も良かったのですが、中盤の強敵となる、山本耕史さんが演じるメフィラスは非常に魅力的な悪役でした。

 メフィラスはウルトラマンが神永と融合したことから人類が強力な兵器になり得る可能性に目を付け、ウルトラマンと同様に巨大化できる技術を人類に供与し、見返りとして自身が兵器となった人類を管理できるよう、言葉巧みに人類を誘導します。

 一方で公園のブランコで遊んでいたり、居酒屋で酒を呑みながらウルトラマンに協力を持ちかけたりと、終始余裕に溢れ、どこか飄々としていて掴みどころのないキャラクターと狡猾な悪役としての姿とのギャップが、なんとも言えない魅力と存在感を醸し出していました。

 ウルトラマンを追い詰める実力を持ちながら、より強力な脅威が地球に迫ってることを知ると人類と地球にはさっさと見切りをつけて撤退するずる賢さも、そうした魅力の一つでしょう。

 

シン・ウルトラマンの気になった点

シン・ゴジラと比べるとどうなの?

 ここまで本作を大体褒めてきましたが、気になる点もあります。

 まずは同じシンの名前を持つ作品としてシン・ゴジラと比較した場合の、方向性の違いについてです。

 シン・ゴジラ東日本大震災など、人間の手には負えない大災害のメタファーを描こうとした側面が強く、どうやっても勝ち目がないゴジラという災害を相手に、現実に即した技術を集結させて立ち向かうという内容でした。

「実際の政府の対応はこんな聡明じゃねーよ」という批判はあったものの、その作風はリアリティが強いものだったと思います。

 

 一方でシン・ウルトラマンは、初代ウルトラマンを現代の世界観、特撮技術を用いてアップグレードさせて復活させるという点に重点を置き、あくまでもウルトラマンという超常の存在を中心とした空想特撮としての作風を重視しているのではないかと感じました。

 本作でも怪獣のことを禍威獣と総称したりと、設定や演出の面でシン・ゴジラに引き続きリアリティを持たせようとしていますが、シン・ゴジラ程のリアリティは重視していないと感じます。

 なのでシン・ゴジラのようなリアリティのある作風を期待していた人には、本作は期待外れになってしまうかもしれないと思いました。

 

ウルトラマンへの愛のあるオマージュが伝わるか?

 作中、メフィラスの策略によって長澤まさみさん演じる浅見弘子がウルトラマンの如く巨大化し、街で暴れ回るというシュールな展開が繰り広げられます。

 初代ウルトラマンでも、ヒロインのフジ・アキコ隊員がメフィラス星人によって巨大化させられてしまうという展開があったので、これはそのシーンのオマージュなのですね。

 ただ、そう言った予備知識がない人にとってはなんのこっちゃと首を傾げてしまうような演出でもあり、ヒロインがこんな扱いを受けてしまうことを「吉牛の生娘シャブ漬け発言と同じような臭いがして不愉快」と批判する人もいるとか……。

 僕自身は「ああ、あのシーンのオマージュか!」と噴き出しそうになりましたが、本作には初代ウルトラマンを知っていなければ理解できないようなオマージュが所々に散りばめられているのですが、なんの予備知識もない人からすればおかしな演出やシーンと捉えられてしまうのでは? と少し不安になりました。

 

 総じて本作は初代ウルトラマンのリブートとしては非常に手堅くまとめられていると感じましたが、それまでのシリーズとは根本から別物と呼べるレベルまで趣を変えたシン・ゴジラ程の衝撃はなかったかなと感じました。

 

これも間違いなくウルトラマン

 不満も述べてしまいましたが、ウルトラシリーズは作品ごとにブレはあるものの、真面目なエピソードとコミカルでシュールなエピソードが混在するバラエティの豊かさが魅力であり、本作もウルトラマンの活躍と宇宙人と人類との時にコミカルさもある攻防戦、人間と宇宙人の合間で揺れ動く神永の心境とバラエティ豊かな構成になっており、空想特撮と謳われた初代ウルトラマンの娯楽性をしっかり受け継いだ作風で、個人的にはこの方向で製作してくれて大正解だったと思います。

 

 来年にはシンの名を引き継ぐシン・仮面ライダーが控えておりますが、こちらも期待半分不安半分で首を長くして待とうと思います。