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ガンダムSEED FREEDOM 感想 ド直球の熱量で描かれる、綺麗ごとと愛の話

機動戦士ガンダムSEEDシリーズの、約20年ぶりの続編である「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」の感想を書きたいと思います。非常に語りたいポイントが多い作品であり、どこに焦点を絞るべきか迷いました。何回かリピート視聴した上で、本作で描かれた綺麗ごとと愛について語りたいと思います。

 

・遺伝子に決められた運命と、自ら選んだ愛の戦い

遺伝子によって人類を統治するデスティニープランを掲げ、世界を支配しようとする新興国ファウンデーション。ヒロインであるラクスは自身がその計画の要として生み出された存在だということを知らされ、世界を統治する者となる運命を突き付けられます。主人公のキラはラクスを奪われてしまったことに絶望し、戦いを放棄しようとしますが、仲間たちの励ましにより、ラクスを取り戻してファウンデーションの野望を阻止するため再び立ち上がり、戦いを挑む、というのがSEED FREEDOMのあらすじです。

極めて先鋭化した優性思想・選民思想に染まった国家であるファウンデーション。彼らは統治者として生み出されたアコードという新人類によって、旧人類たちを支配することを目的としていました。アコードは自分たちの遺伝子に刻まれた役目に従うことを絶対視しており、ラクスを自分たちの指導者として掲げるべく拉致し、ラクスの恋人であり邪魔な失敗作であるキラを排除しようとします。

アコードの計画は成功しキラは死亡(生きてましたが)、もはやラクスは運命に従うだけ……と思われました。しかしラクスは毅然とした態度でアコードと自らの運命を拒絶しました。そして「必要だから愛するのではありません、愛しているから必要なのです」と、キラへの愛を貫き通そうとします。

そしてラクスがくれた愛と自分のラクスへの愛を噛み締めたキラは「僕にも武器がある! ラクスの愛だ!」「愛されることに、資格なんて必要ない!」と、果敢にアコードに立ち向かっていくのです。

彼らの言うことは綺麗ごと

身も蓋もないことを言ってしまえば、キラとラクスの主張は現実においては綺麗ごとでしかないでしょう。必要だから愛することも、愛されることに資格が必要なことも、現実には珍しくなどないからです。

家系を守る為に、政略結婚として愛し合ってもいない男女をくっつけることなど昔からよくあること。そうでなくとも、生きていく為、自分の人生を豊かにする為に、優れたステータスを持つパートナーを追い求めることは人間として当たり前。動物としてそれは当然のことであり、何ら問題のある行為ではないでしょう。

愛されることに資格や条件が必要なことも、現実にはよくあることです。特に恋愛に関しては、容姿がいい、コミュ力がある、稼げる力があるなどの、何かしら異性を引き付ける魅力がなければ成立しません。こうした魅力を持っていない人間は異性に相手にされず、それが嫌なら努力して魅力を身に着けるしかないのが現実です。

恋愛に限定せずとも、自分の子供が思うような成果を出せなかったり、自身の決めたレールに従わなければ愛を与えなかったり拒絶するような毒親という人たちも、現実には溢れかえっています。

なんの見返りも求めない無償の愛などそうそうあるものではない。そんなものを求めていたら生きてはいけない。キラとラクスの主張は、残念ながら現実においては綺麗ごとでしかないのでしょう。

それでも、綺麗ごとを貫き通す

キラとラクスの言うことは確かに綺麗ごと。しかし、彼らはそんな正論など知ったことか! とばかりに、自分たちの想いを貫き通そうとします。

お互いの優しさに惹かれ合い、一緒に生きてきたキラとラクス。しかし終わりの見えない戦いの中で2人の心は傷つき、すり減り、段々とすれ違っていき、遂には世界を支配しようとする悪意によって引き離されてしまいました。しかし、離れ離れになったことで、キラはラクスに隣で笑っていて欲しかったこと、ラクスはキラへの決して消えない想いが胸の中にあることを知ります。逆境の中、お互いの愛を理解したことで、2人の間に本当の愛が芽生えたと言えるでしょう。

踏んだり蹴ったりな目に遭いながらも、ようやく掴んだ愛を掲げ、キラとラクスは未来を掴み取る為に、未来を奪おうとするファウンデーションに立ち向かっていくのです。その様はまるで、圧倒的な熱量を持った愛というボールを、小細工なしの剛速球としてブン投げ、愛は綺麗ごとなんてごちゃごちゃしたノイズを完全に粉砕してしまうかのようでした。

たとえ綺麗ごとであっても、決して譲れない、貫き通したい想いがある。それを守る為に、どれだけ不利で傷つきながらでも戦わなければならないときがある。キラとラクスの姿に、そんなことを感じました。

 

まとめ 20年越しに見た希望の光

「遺伝子によって決められた運命と、自ら選んだ愛の戦い」「彼らの言うことは綺麗ごと」「それでも、綺麗ごとを貫き通す」というテーマで、ガンダムSEED FREEDOMについてお話しさせて頂きました。

SEEDの舞台であるコズミック・イラは、新人類たるコーディネーターと、旧人類であるナチュラルの終わりの見えない争いが続く世界です。これまでキラ達は幾度も世界の破滅を食い止めてきましたが、それでも世界は一向に良くならず、その様子は露悪的ですらありました。

そんな救いのない世界に見えたコズミック・イラ。そこにSEED FREEDOMは愛という、使い古された陳腐な言葉ではあるけれど、それでも胸に響くテーマをド直球の熱量でブン投げ、一筋の希望の光を見せてくれたのです。SEEDの露悪的な作風が肌に合わず、好きになれなかった自分も、本作でこれまでのモヤモヤが晴れ、ようやくSEEDのことを好きになることができました。

長い道のりではありましたが、平和の為に戦い続けたキラとラクスと仲間たち、そしてSEED FREEDOMを世に送り出したスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。