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ラノベ作家に夢を見る奴はまずこれを読め! 谷川ニコさんの「ライト姉妹」感想

谷川ニコさんの「ライト姉妹 ヒキコモリの妹を小卒で小説家にする姉と無職の姉に小卒で小説家にされるヒキコモリの妹」を読みました。

 

 

……タイトルの時点で大体説明できる内容というかこの時点で色々駄目そうな雰囲気が漂っておりますが、意外にも小説家(というかラノベ作家)という仕事に真面目に向き合った、お仕事ギャグマンガとなっています。

ダメ人間を不快に見せない、絶妙なさじ加減

引きこもりの中学生、奏愛が、仕事を辞めて暇を持て余していた姉の希美の思いつきでラノベ作家を目指すことになってしまうというお話。

妹の奏愛は「将来は生活保護で暮らすの!」なんてことを堂々とのたまうクズっぷり。あの手この手で現実逃避を繰り返しては痛い目を見るダメ人間ぶりがリアルダメ人間の自分には笑えるけど突き刺さります。


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出展 谷川ニコ ライト姉妹 1巻  KADOKAWA

 

おねいちゃんこと姉の希美はかなりの毒舌家……を通り越してサイコパス気味な性格で、爽やかな笑顔で奏愛の甘い幻想や拙い小説を一刀両断し、的確に奏愛の心を抉ってきます。



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出展 谷川ニコ ライト姉妹 1巻 KADOKAWA

 

奏愛のダメ人間ぶりとおねいちゃんのエッジの利いた毒舌とサイコっぽさはダメ人間諸氏には非常に目にも耳にも痛いのではないでしょうか

ただかわいい絵柄と淡々と進んでいく話のテンポのよさのおかげで、奏愛のクズさやおねいちゃんのえげつなさが不快にならない程度に上手くギャグに昇華されている印象です。

 

どんなにしんどくても書かなきゃいけないしんどさ

無理矢理小説を書かされているうちに段々と書くことに慣れていく奏愛ですが、やがて小説家の厳しさにも向き合うことになります。

 


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出展 谷川ニコ ライト姉妹 2巻 KADOKAWA

 

新人賞の締め切りが近いのに書くのをサボろうとしておねいちゃんの逆鱗に触れてしまった奏愛(この漫画じゃよくあること)。小説を書き終わるまでカンヅメにされてしまい、ひたすら書き続けなければいけない現実に三日で音を上げてしまいますが、おねいちゃんは「それが趣味(好き)を仕事にすることよ」と奏愛を諭しました。


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出展 谷川ニコ ライト姉妹 2巻 KADOKAWA

 

「書きたい時に書くのは趣味。仕事としてやっていきたいなら書きたくない時にも書かなきゃいけない」「明日が締め切りなら家族が死んでも同級生や妹がパンツを見せる文章を書かないといけない」

おねいちゃんに作家という仕事の現実を突きつけられ、奏愛は覚悟を決めたかのように執筆にのめり込むようになるのでした。

僕は文章を書くのが好きでこんなブログをやっております。そんなブログの更新でさえ、中々思うように書けずにモチベーションが上がらず、サボってしまうことも少なくありません。

いずれブログの収益化やライティングの仕事にも挑戦したいと思っています。しかし、趣味として好きなことを書いてるブログですらつまづくことも多いのに、好きじゃないことも書かなきゃいけない仕事として取り組むことができるのか、自分でも不安になります。

 

本作はダメ人間がラノベを書くことを口実に現実逃避するギャグ漫画のように見えて、意外と真摯にラノベ作家という仕事を描いている漫画でもあるんですね。

 

クズでゴミでダメ人間な俺にこそ、小説が必要

おねいちゃんは「ラノベ作家はきっとダメな人間たちの憧れの職業。だからダメ人間でもバカでもクズでも目指していい」と奏愛に語っており、そして僕もそんなバカでクズなダメ人間です。

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出展 谷川ニコ ライト姉妹 1巻 KADOKAWA

 

僕は以前趣味で小説を書いていましたが「いい年して下らない小説なんて書いて現実逃避していたらダメ人間になってしまう……こんなこと止めて真人間にならなきゃ……」と、小説なんて書くのは恥ずかしいことと考えて、小説を書くのを止めました。

eijiutsudo.hatenablog.com

ただ、今思えばこれは真逆で、自分がダメ人間だからこそ小説が必要なのではないか?と思うのです。

自分の中にある妄想を小説として形にするにはかなりのエネルギーが必要です。ダメ人間の自分にとっては小説を書きたいという欲求によって生まれるエネルギーこそが自分を突き動かすのに必要不可欠だったのではないかと思います。

最近久しぶりに放置していた小説をまた書き始めたのですが、書くのは大変ですがなにも書いていなかったときよりも明らかに充実感のようなものを感じるようになりました。

「なろう小説は現実逃避」と馬鹿にする人は多いですが、馬鹿にされるような小説だろうとそれを書くことで生きていくエネルギーになるのであれば、臆せずにどんどん書いたほうがいい。本作を読み、久しぶりに小説を書くようになって、そんなことを思いました。

 

まとめ ラノベ作家に夢を見るならこれを読め!

今やラノベ作家は飽和状態で、厳しい実態も明らかになり、昔のようにこの仕事に夢を見る人は減ったのではないかと思います。

ただ、それでもラノベ作家を夢見る人には、とりあえず本作を読んで欲しいです。おねいちゃんの容赦ない毒舌で心を抉られるかもしれませんが、同時に本作は谷川さんなりの、ラノベ作家を目指すようなダメ人間に向けたエールだと思うのです。

なれるかどうかは別として、本作を読んでも尚ラノベ作家を目指したいと思うなら、どれだけ馬鹿にされても自分の歪んだエネルギーを燃やして書き続けましょう。